国際情勢講演会 【講演要旨】(ピース☆フェスタ from くらしき 「地球平和フォーラム」にて講演)
日本の平和づくり外交「祈る平和」から「つくって育てる平和」へ
講師:谷口 智彦 外務省外務副報道官
世界連邦運動協会は老舗の平和団体。NGOとかNPOという言葉が生まれる以前から活動してきた。
最近の実績は、イスラエル・パレスチナから遺児を招待しての交流事業と、ICC国際刑事裁判所への加入を推進したこと。
イスラエル・パレスチナから遺児を招待するのは世界で日本だけ。外務省も応援している。
日本にいるとわかりにくいが、イスラエルとパレスチナで互いに身近な人が殺されたという怨念の深さは現地に行くと本当に感じる。その双方から子供を招くと、相手の側を「親を殺した仇」と思っていたのに、砂漠を離れて緑豊かな日本に来るだけで心が洗われていく。そして絶対に交わらなかったであろう両者が実は悩みが同じであったこと、実はともに平和を望んでいたことに気づく。一度共感の涙を流した人達はその後メールなどで交流を続けている。こういったことがいつの日か和解の潤滑剤になるであろう。
外交は外務省の占有物と思うかもしれないが、このように市民でないとできない外交もある。
国際刑事裁判所について、日本は世界で105番目に加入したが、その陰に世界連邦運動協会の皆さんの地道な努力があった。
国際刑事裁判所は国際人道法という新しいジャンル。日本がバブルに対する反省で内向きになっていた頃、ルワンダでは子供の足を切り落としたり腕を切り離すなど、口で言い表すのもおぞましいことが日常繰り広げられていた。今は米ソがミサイルを打ち合うというよりも、部族間の殺し合いのような紛争が現実の脅威である。住居を失いほうほうのていで逃げ、水もない、学校もない所に行く。衛生知識がないのでエイズやマラリアで更に多くが亡くなるという悪循環に陥る。
こういった90年代の反省から国際刑事裁判所に加入するなど、もっと積極的な外交を行うという方針に変わってきた。
記者の皆さんから「国際刑事裁判所のことにしても、最近日本がアフリカへの援助に力を入れていることにしても、それが日本にいったいどういう関係があるのか」という質問をよく受ける。
日本は不景気、インドや中国やロシアは経済力が上昇しているというが今なおインド・中国・ロシアを合わせたものより日本の経済力が上である。イギリスとフランスを合わせたのとほぼ同じ経済力だ。そして島国であるにもかかわらず日本が豊かでいられるのは、海の道が平和で、カネ・ヒト・モノが自由に行き来できるからである。それを考え、日本は国力に見合った貢献を積極的に行う時期に来ている。
そういうこともあって、今くらい外務大臣が国際会議の場での発言が多い時期もない。今年は5年に一度のTICAD IV(第4回アフリカ開発会議)と8年に一度のG8サミットがともに日本で行われるという、日本の外交にとって40年に一度の大きな年である。
本日のテーマは「祈る平和からつくって育てる平和へ」であるが日本は他国のことにも無関心にならず、積極的に平和を作り出す努力が必要である。
注目していただきたいのは、広島大学が設置する広島平和構築人材育成センターで平和構築分野の人材育成のためのパイロット事業である。第一期生は、コソボやスーダン、東ティモールやスリランカを始め、各国の平和構築現場で厳しい生活環境と戦いながら、実務の研鑽を積んでいる。最初から、日本とアジア各国の混成クラスにしたところが特色である。将来はこの事業を、ピースビルダーを育てるアジアの拠点にしたいと外務省は考えている。